@misc{oai:nipr.repo.nii.ac.jp:00016853, author = {小山, 寛}, month = {2022-03-16}, note = {2021, 南極大陸は過酷な気候条件により多くの生物にとって生命活動を行う上で厳しい環境であることから、地球上で最も陸上環境の生物活性が低い地域の1つである(Chown et al. 2015)。南極大陸には数多くの湖沼が点在しており(Wand et al. 1997; Kimura et al. 2010)、湖沼内は、陸上環境よりも比較的安定した環境である(Vincent et al. 2004)。年間を通じて凍結を免れる湖沼底には、シアノバクテリアなどの細菌や藻類、コケを中心とした湖底マットが確認されており、湖沼によって湖底マットの色や形態などの特徴が異なることが知られている。しかし、湖底マット中の生物群集構造や、マットの多様性が生じる過程、その要因についてはほとんど知見がない。多様な湖底マットの成立過程を解明するためには、湖沼が成立したのち現在までにたどってきた地史や生物群集構造の変遷に関する研究が必要である。そこで本研究では、南極大陸沿岸部である昭和基地周辺の露岩域の湖沼環境における湖底マットにおける生物群集構造を解明し、湖沼間での多様性に違いがあるかを明らかにすること、露岩域や湖沼の変遷と湖底マットの生物群集構造との関係を解明し、現在の湖底マットの多様性がどのように成り立っているのか明らかにすることを目的とした。4つの氷河後退湖(菩薩池、如来池、仏池、長池) と1つの海址湖(スカーレン大池) における湖底マット中の微細生物群集について、顕微鏡観察による細胞容積の定量、メタバーコーディング解析、窒素固定能の分析による生態学的機能の定量を組み合わせた多面的なアプローチで分析した。その結果、マット表層サンプルの細胞容積分析から、糸状性シアノバクテリアがコロニーを形成し優占する湖沼(菩薩池、如来池、仏池)、珪藻類が優占する湖沼(長池)、糸状性シアノバクテリアと糸状性緑藻類が優占する湖沼(スカーレン大池) が確認され、湖底マット表層の光合成生物量は湖沼間で異なること(分散分析, p < 0.05)、光合成微生物群集構造は湖沼間で異なることが明らかになった(PERMANOVA, p < 0.05)。メタバーコーディング解析によって得られた細菌群集データからも、各湖沼は独自の群集構造を持つことが明らかになった(PERMANOVA, p < 0.05)。また、窒素固定能の分析からは、南極夏季に湖底マット中の微生物群集は窒素固定を行なっている可能性が長池を除く4湖沼で示された。堆積物コアサンプルの分析からは、深度ごとに出現するOTU が異なる傾向にあったことから、細菌群集構造の類似性は湖沼間よりも深度間で小さいことが示唆された。以上のことから、氷河後退湖の微細生物群集構造の変遷は、氷河作用によるゼロリセットからの生物蓄積であり、窒素固定能を持つシアノバクテリアが初期に貢献した可能性が推察された(Pessi et al. 2019)。海址湖の微細生物群集構造の変遷は、淡水化後、他の氷河後退湖と同様の変遷をたどったが、海成堆積物由来の栄養塩を利用できたことで生物活性が高くなった可能性が示唆された。長期的スケールでの細菌群集構造の変遷は湖沼の地史に影響を受け、短期的なスケールでの群集構造は湖底マット中の微環境や湖沼への栄養塩などの流出入といった物理化学的性質といった要因に影響を受けることが推測された。}, title = {南極湖沼での微細生物群集の多様化と変遷に関する研究}, year = {}, yomi = {コヤマ, ヒロシ} }