@misc{oai:nipr.repo.nii.ac.jp:00016852, author = {吉野, 薫}, note = {2018, 海棲哺乳類は海洋の食物網の中において主要な消費者であり、海洋生態系の中で重要な役割を果たしていると考えられる。彼らがどのような餌生物をどのように利用しているか、という採餌生態を種ごとに明らかにすることは、海洋生態系の変化が彼らに与える影響や、捕食行動を通じて彼らが海洋生態系に与える影響を正確に評価するために必要である。これまで、胃内容物同定や安定同位体分析など様々な食性研究の手法が開発されてきたが、採餌場所や採餌深度などといった行動記録に対応する、海棲哺乳類の食性の情報を収集することはできなかった。近年、海棲哺乳類にビデオカメラを装着し、餌生物の捕食を撮影する手法が注目されている。この手法は、時間的により詳細な観察が可能であるが、撮影記録時間が数時間程度に限られるという問題がある。そこで本研究では、動物が特定の深度に到達し、捕食に関わる動きがあった時にだけ作動するビデオロガーを使用して、ビデオ記録時間内により多くの捕食を観察することで、回遊中のキタゾウアザラシの食性を明らかにすることを目的とした。 キタゾウアザラシは、アメリカ・カリフォルニア州からメキシコの太平洋岸を繁殖地とする、北太平洋の代表的な潜水性高次捕食者であり、回遊経路や潜水行動についての研究が盛んになされてきた。しかし、回遊中の食性については、胃内容物同定の研究が行なわれたにすぎず、知見が限られていた。 カリフォルニア州アニョヌエボ州立公園において、繁殖後回遊へ出発する直前のキタゾウアザラシのメスを対とし、2013年、2015年〜2017年の2月に、頭、あるいはあごに動物装着型ビデオロガーをフラッシュと共に装着した。2016年のビデオロガーにはディレイタイマーを、他の年のビデオロガーにはディレイタイマー、深度トリガー、加速度トリガーを設定し、ビデオ撮影を試みた。また、衛星発信器、あご加速度記録計などを装着し、位置情報、深度記録、水温記録を収集した。 その結果、15個体のキタゾウアザラシから48時間10分36秒分のビデオを記録し、そこから697個体の餌生物個体を確認した。記録できた餌生物サンプル数が多いアザラシ12個体に限ってみると、餌生物のうち魚類が平均77%、頭足類が平均7%、分類不可が平均16%であった。またこの12個体全てで、記録された餌生物の50%以上を魚類が占めていた。アザラシによる餌生物の捕食は東経122°〜150°、北緯36°〜56°の沿岸から外洋までの範囲で撮影されたが、魚類がもっとも広い範囲で撮影された。また、アザラシの捕食は深度220m〜1167m までの範囲で記録されたが、深度100mごとに記録された餌生物を分けたところ、ほぼ全ての深度帯で魚類が50%以上の出現頻度を占めていた。アザラシの捕食は水温3.2℃〜6.6℃までの範囲で記録されたが、水温0.5℃ごとに記録された餌生物を分けたところ、全ての水温帯で魚類が70%以上の出現頻度を占めていた。胃内容物同定による研究から、これまでキタゾウアザラシは頭足類を主な餌生物として利用していると考えられてきたが、本研究の結果、魚類を利用する割合が多いことが明らかになった。同定できた餌生物にはハダカイワシ科魚類が含まれており、キタゾウアザラシは資源量の多い中深層性魚類を捕食していると考えられる。 以上の結果より、キタゾウアザラシは魚類と頭足類を主な餌生物として利用し、特に魚類を利用する割合 が高いことが示唆された。ビデオカメラロガーを用いた手法は、海棲哺乳類の位置や深度と対応した食性デ ータを取得できる点で有効であり、今後他の種類への適用が期待される。}, title = {ビデオカメラロガーを用いたキタゾウアザラシの食性に関する研究}, yomi = {ヨシノ, カオリ} }