{"created":"2023-07-25T11:11:46.417123+00:00","id":16440,"links":{},"metadata":{"_buckets":{"deposit":"02209b6a-1388-4fa4-9a88-0629477da5c4"},"_deposit":{"created_by":17,"id":"16440","owners":[17],"pid":{"revision_id":0,"type":"depid","value":"16440"},"status":"published"},"_oai":{"id":"oai:nipr.repo.nii.ac.jp:00016440","sets":["2083"]},"author_link":["72392"],"item_10006_date_granted_11":{"attribute_name":"学位授与年月日","attribute_value_mlt":[{"subitem_dategranted":"2021-03-31"}]},"item_10006_degree_grantor_9":{"attribute_name":"学位授与機関","attribute_value_mlt":[{"subitem_degreegrantor":[{"subitem_degreegrantor_name":"総合研究大学院大学"}]}]},"item_10006_degree_name_8":{"attribute_name":"学位名","attribute_value_mlt":[{"subitem_degreename":"修士(理学)"}]},"item_10006_description_10":{"attribute_name":"学位授与年度","attribute_value_mlt":[{"subitem_description":"2020","subitem_description_type":"Other"}]},"item_10006_description_7":{"attribute_name":"抄録","attribute_value_mlt":[{"subitem_description":"南大洋は海洋の人為起源CO2吸収の約40%を担う生物地球科学的循環にとって重要な海域である。南大洋季節海氷域の生物生産研究は、海氷融解とともに高い植物プラクトン量がみられる氷縁ブルームを中心にその消長、食物網および海洋表層の二酸化炭素分圧低下による大気からの炭素吸収に着目して行われてきた。氷縁ブルームは表層の栄養塩が律速することや、表層混合層深度が深くなることで短期間(<14 日)に終焉するが、この短い現象が実に南大洋における基礎生産の25%以上に達すると見積もられている。しかし裏を返せば、我々の南大洋生態系に対する理解において、基礎生産の残りの部分を説明するに足りていないということを意味している。氷縁ブルームが終焉したのち、特に12–3 月に渡る長い期間は海氷がない期間が継続するが、この期間には亜表層にクロロフィル極大(Subsurface Chlorophyll. a maximum:SCM)が形成されていることが分かってきた。亜熱帯などではこのSCM の消長や生態学的役割についての知見が蓄積されつつあるが、南大洋での知見はスナップショット的な観測に限られるため、その動態や生態学的な役割の理解には至っていない。そこで、本研究では漂流系を用いた時系列観測を通して、海氷融解後の中期的なフラックス特性と海洋環境との関係性、および短期間の漂流系観測と船上観測による低次生産機構の動態と物質収支の把握を目指した。\n漂流系を用いた調査観測は2016 年12 月8 日から約1 ヶ月間、直後の2017 年1 月17 日から24 時間、2019 年1 月14 日から5 日間の計3 回行った(観測①、②、③)。漂流系の投入は全て63.5°S、110°E 地点で行った。観測②、③では漂流期間中に系の近傍において船舶によるCTD 観測およびニスキン採水を行い、漂流系で得られたセンサーデータ、疑似現場法による基礎生産量、セディメントトラップで実測した沈降フラックスと合わせて物質収支を推定した。\n観測①では漂流系投入後に深度25 m のクロロフィル蛍光値と表層(衛星観測)に高いクロロフィルa(Chl. a)濃度が観測され、その水塊と共に北西の海氷の影響が強い水塊へ移動したと考えられる。12 月23 日以降には25 m のChl. a 濃度が低下し、衛星でも高Chl. a が確認できなくなった。回収時にはSCM が形成されていたことから23 日以降にはSCM が形成されたと推察される。50 m センサーにおけるTS ダイアグラムによると、特に15–19 日にModified Circumpolar Deep Water(MCDW)の影響を受けていることが分かった。MCDW は栄養塩を多く含むことから、下層からの栄養塩の寄与が示唆される。POC フラックスの特徴としては、高Chl. a 期には高く、低Chl. a 期には低い傾向を示した。 POC フラックスが高い14–18、18–22 日は動物プランクトン糞粒が占める割合が高く、それぞれ44、48%であり、動物プランクトンによる摂食がPOC の下層への輸送に主要な役割を果たしていたと考えられる。一方、投入回収時の鉛直的な水塊構造は大きく異なっており、これらのクロロフィルおよびPOC フラックスの増減は同一水塊中での時間変化のみでなく空間的な環境の違いによるものを含むことが示唆された。\n観測②と③で観測されたSCM の構造には特徴的な違いがみられた。観測②ではChl. aの極大値は0.3–0.4 μg L-1 であったのに対して、観測③では南大洋における植物プランクトンブルームの基準(1.0 μg L-1)を超える1.0–2.0 μg L-1 と非常に高い値を示した。基礎生産量については特に表層の値が大きく異なっていた。観測②が0–10mにかけて5.3–5.5 mg C m-3day-1 であったのに対して、観測③では2 回の実験を通して13.6–26.4 mg C m-3 day-1 と高く、かつ観測の後半に高くなる傾向を示した。観測②と③で観測されたSCM の規模(Chl. a 濃度および水柱現存量)と基礎生産量にこのような違いがみられた要因はWinter Water やMCDW の深度と鉛直混合による下層の栄養塩の供給の違いによるものだと考えられる。観測③では生産層により近い深度にWinter Water やMCDW が存在しており、漂流系に設置したセンサーとCTD の結果から下層の水塊の影響が表層混合層内にまで達していたことが推察された。さらに表層内での再生がほとんど起こらないケイ酸塩が表層で増加していたことも、この考察を支持しており、ボトムアッププロセスがSCM の規模を支配していた可能性が高い。\n水柱およびフラックス中の植物プランクトンは、観測②、③ともにほぼ全ての深度で小型のハプト藻類であるPhaeocystis antarctica が最優占していた。しかし、その割合は異なっており、観測②開始時の水柱では77–95%(平均84%)であったのに対して、観測③では29–91%と幅があり、平均して57%と観測②よりも低い値であった。それに応じて珪藻の割合は観測③のほうが高くなった。珪藻の優占種は観測②ではFragilariopsis cylindrus/ nana であったのに対して、観測③ではChaetoceros sp.であった。Fragilariopsis cylindrus/ nana は氷縁ブルームをはじめとして南大洋において広く分布する種である。一方、Chaetoceros sp.は沿岸域で優占する種であることが知られているものの外洋域の環境にも適応するという報告がある。観測③では下層からの栄養塩の供給によって外洋環境にも適応したChaetoceros sp.が増殖し、基礎生産にも寄与したと考えられる。\n観測②と③において観測期間中の炭素収支を算出した。観測②では0–50 m においてPOC現存量の約半分が24 時間後に消失しており、この量は基礎生産の約8 倍、表層混合層直下におけるPOC フラックスの80 倍以上に相当した。観測②ではP. antarctica の優占率が高く、小型の植物プランクトンやバクテリアが起点となる微生物ループの働きがPOC の消失に寄与していたことが考えられる。観測③では0–60 m(上層)において基礎生産では説明できないPOC の加入が550 mg C m-2 あった。逆に60–150 m(下層)では1340 mg C m-2 ものPOC が消失したと見積もられた。観測③を3 つの期間に分けて収支を算出すると、上層、下層の順に消失から加入へと転じ、60 m に対する150 m フラックスで示される移出効率が35%から99%に高まった。観測③ではP. antarctica の優占率が観測②よりも低く、大型の珪藻の現存量が高いことで微生物ループよりも生食物連鎖が卓越していた可能性が高い。それによって、生物ポンプの働きが強まり、移出効率も高くなったと推察される。POC の消失、加入については様々な生物、物理プロセスが関係しており今後検討が必要である。\n以上の結果から、実験②と③におけるSCM の規模の違いは下層のWinter Water やMCDWの存在する深度と混合よる下層からの栄養塩供給に支配されている可能性が示唆された。加えて、観測③のほうがより躍層が強く、植物プランクトンが蓄積されやすかったと考えられる。大規模なSCM がみられた観測③では、表層における大型珪藻の増加が、高い基礎生産の一因であった。これが生産量のみでなく、生食食物連鎖を通して冬季の混合層以深への炭素移出効率に寄与していたことが考えられる。SCM の消長と物質循環における役割の理解のためには、多くのケースにおける観測データ蓄積が必要であるが、その際に本研究で示唆された物理環境が支配するSCM の構造、植物プランクトンと食物網構造との関係やそれによってシフトする炭素収支に留意する必要がある。","subitem_description_type":"Abstract"}]},"item_access_right":{"attribute_name":"アクセス権","attribute_value_mlt":[{"subitem_access_right":"metadata only access","subitem_access_right_uri":"http://purl.org/coar/access_right/c_14cb"}]},"item_creator":{"attribute_name":"著者","attribute_type":"creator","attribute_value_mlt":[{"creatorNames":[{"creatorName":"影沢, 歩友子"},{"creatorName":"カゲサワ, 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